Daily Archives: 2016-09-01

ホイスコーレ日記19:デッサンとクロッキー

デンマークのDen Skandinaviske Designhojskole に留学した時のことを写真を交えて振り返ります。

第19回目:デッサンとクロッキー

新しいことだらけで何かと忙しいことも多かった一週目が終わると、グラフィックコースの生徒はデッサンとクロッキーの授業を一週間することになりました。これは全コースの生徒が受ける授業で、次の週はファッション、その次はアーキテクチャ…というふうになっていきます。

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意外だったのはクロッキーやデッサンをやったことがない!大丈夫かしら!?とみんなが騒いだこと。そう、デザインの基礎を勉強してきている人の方が少ないんです。そして、これは人によっては残念かもしれませんが、日本でやるような「学術的な」デッサンの授業ではありませんでした。逆に僕にとっては自分の凝り固まったものを溶かす意味でとても有益な時間になったと感じています。

デッサンは「アカデミック」「フィーリング」の2つのクラスを2人の先生が一週間受け持ち、グループ分けされた生徒は2日ずつ両方を受講しました。

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まずはよくある「鉛筆だけで6色のグラデーションを描きましょう」というのから始まり、おぉ、アカデミックだと思っていたら、じゃ、これ描いて!と出てきた剥製たち。「こうやって線を引くとどう見えるのか…」「線をこう組み合わせるとこんな見え方になる」「もっと色を濃くして、コントラストを上げてみて!」色々な条件を出されながら、自分がどういう描き方ができるのかをつかむ訓練だったような気がします。上手く描く必要はない、描くっていうことがどういうことなのか、目の前に存在しているものを紙に乗せるってどういうことなのか、先生は伝えたかったんじゃないかなぁ。

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もう一つのフィーリングは、技術的な話は全くありません。直感で描き進めていきます。「目の前のスクリーンに表示された風景を、直線だけを使って描いてみましょう!」「次は円しか使っちゃダメ!」「次は音楽に乗りながら!」「次は前を見ちゃダメ!」「感じたままを紙に描いてみて!」アカデミックなデッサンとは対極で、自分を自由に出すことができる授業でした。その分、スキルや経験がある人は苦労し、何にも知らない人の方が素直に授業に溶け込めていたのではないかと思います。

ホルケホイスコーレを卒業した後に大学に行く生徒が多いため、この授業はそのファンデーションとしての位置付けが大きいと感じました。しかし、日本で行われる「美大受験のためのデッサン」の頭でこの授業を受けていると置いていかれてしまいます。それは多分、受験の為に描いている絵ではなくて、自分のスキルアップ・自分の感性を磨く為に描き、周りとコミュニケーションするための授業だからだと思いました。

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授業の終わり毎に講評がありました。その日に描いた絵を床に並べて、一人ずつ先生からコメントが出ます。このディテールはとても綺麗!これはとても自由に描けているね。こっちで迷っちゃったけど、こっちでは持ち返したね。この絵大好き!そんな感じで、先生のコメント、生徒のコメントはポジティブ!生徒の良いところがどんどん伸びていきます。そして、苦手なところは得意な人に任せていこうという構図が自然と出来上がっていったような気がします。